留学って実際就活に役立つの? 阪大留学経験者のその後を追跡してみた! Vol.3

みなさんこんにちは、ライターのふぅです。

 

留学にいくことで自分のやりたいことが見えるのでは?と留学を志す人もいるかと思うのですが、実際留学経験をした先輩は、どのように留学経験が今後の人生に影響を与えたのでしょうか?

阪大留学経験者のその後を追跡してみた!という趣旨でいろいろな先輩にインタビューする企画の第三弾です!

 

今回は、阪大留学REALブログの2019年度メンバーである、たなおにインタビューしました!

 

2017年大阪大学法学部国際公共政策学科入学。3年の夏からのカリフォルニア大学バークレー校への交換留学を経て、現在は政府系の機関で勤務。

 

ふわふわしている自分をリセットしたい。

 

ー本日はよろしくお願いします!まずはじめに、留学を志したきっかけを教えて下さい。

一番の理由としては、阪大生の現実から離れたいっていうのが大きかったです。

毎日忙しかったんですよね。家から大学に通っていたから通学時間も取られるし、自分が本当にやりたいのかわからないまま必修授業のテストのために勉強、サークルやバイトもしていて、留学前までの自分は、ふわふわしているなと思っていました。今振り返っても、自分がどういうこと考えていたのか、何をしていたのか記憶にないくらいふわふわしていました。

留学に行くことで、その状況をリセットしたいと思っていました。自分とちゃんと向き合いたい。人生で一番勉強する機会にしようと思って、留学しようと思いました。

 

ーやりたいことがふわふわして分からなかった中で、留学の方向性はどうやって決めたのですか。

周りで留学しようとする人は、もともとこれを勉強したくて、その研究が進んでいる大学で勉強しようとする人が多かったです。けれど自分は、「この環境から離れたい」から入ったので、これが勉強したいというものが強くなくて、最終的には紛争解決学にしたのですが、志望動機を書く際も、どの科目で行こうかと正直迷っていました。

私は、良く言えば興味が広くて、悪く言えば飽き性なところがあって、一つの分野を突き詰めるのがあまり合っておらず、いろいろなことを少しずつ勉強する留学にしたいと思っていました。

 

ー興味の発散は、法学部でありながら経済・政治も学べる国際公共政策学科あるあるなきがします(笑)リセットしたいという思いで留学して、それは達成されましたか。

私の留学を振り返ると、一学期目は紛争解決学をとってみたんですけど、「やばいこれまじで何言ってるか分からない!」ってなったんですよね。その授業が入門というより、実践寄りの授業で難しかったんです。今振り返ったらついていけてたし、やってやれないことなかったと思うんですけれど、自信ををなくしてしまいました。この教室で一番分かってないのは私だという事実に打ちのめされました。

結局その授業は取らないことにして、「あれ、紛争解決学勉強しに来たのに、結局授業とってない...」って、自分を肯定できないでいました。代わりに、インドの文化人類学、ジェンダー学、ドイツ語の授業を取りました。今考えると留学先でしか勉強できないことができたなと思います。ドイツ語も今も意外と残っていたりするので、それはそれで良かったなと思うようになりました。

大学の授業の様子

 

自分を肯定できるようになった

 

ー意図せずではあったものの、当初の予定であった「少しずついろいろ勉強する」にいきついたんですね。

そうですね。ドイツ語を履修したっていうのも、実はキャパーオーバーしそうだったから、比較的英語の負担が少ないものを取りたくて選びました。取った授業は全部自分のものにしたくて、宿題や授業に全力投球したかったというのが背景としてあって、ドイツ語で息抜きしてた部分もあります。それを自分で肯定できるようになるには時間がかかって、初めは「これは逃げや!」って思っていました(笑)
けれど、しかたないなって。消化できないし、これが自分の現状かなと思いました。

 

ー自分を肯定できるようになったきっかけは何だったのですか。

初めは、ドイツ語の授業の履修とか、専攻を変えたこと、広く浅い勉強をしていることも肯定できなかったです。そんな中で、研究留学をして、この分野のこの先生のもとで勉強したい!って留学している人と話す機会があったんです。

その人に対して、「留学って一つの分野を深めるものだと思うし、かっこいいです。自分の留学ってほんま何してるんやろって思うんですよね。」って相談したときに、その人が言ってくれたことが印象に残っています。

「いろいろな分野を幅広く勉強する発散型一つの分野を狭く深く追求する集中型の二種類の人がいて、社会には両方必要だ」と言われたんです。
幅広くやっている発散型の人のおかげで、分野と分野がつながるから、私みたいな人も必要だと言われました。
その言葉で、私の方向性間違ってないんだって思えたんです。

 

ーその人との出会いが大きくたなおさんを変えたんですね。

突き詰めている側の人の言葉に救われたことは大きいかもしれません。自分とは違うタイプの人に肯定されたこと、そのままでいいんだよと言われたことに救われました。

同じように、理系の人と話したときに、日本の大学の勉強のほうが難しかったと言っていて、驚いたことを覚えています。理系の場合は語学力での苦しみがそこまで大きくないみたいで。その理系の人から、アメリカ人に囲まれてディスカッションしててすごいよって言われたときに、「確かに私ってすごいことしているよな」って思えました。人に言われて初めて分かるという感じですね。

 

頭では分かっていたことを、身体で納得できたのが留学のよかったところ

 

ーキャリアや今後について、留学を機に考えるきっかけとなる出来事などがあれば教えて下さい。

大学4年で卒業して、就職して、結婚してっていうキャリアのイメージが無意識のうちにあったと気付かされました。というのも、アメリカで出会った人があまりにも自由で、レールに縛られない考え方をしていて、そもそもレールがないっていうような感じでした。

ただ、これって、留学する前も頭では分かっていたんですよね。けれど、実際に目の前の人が言っているのと、テレビで見たり話で聞いたりするのとは違うなと感じました。そういう多様な人と関わる機会は日本の外の方が多いのかなと思いました。

 

ー実感が伴ったということですよね。頭の中では分かっているけれど、無意識下にすりこまれているレールがあったことに気付いたっていう。

留学全体的に、頭では分かってたことを実際に経験して、身体全体で納得するというのが多かったかなと思っています。
例えば、日本は "we" の文化でアメリカは "I" の文化、個人主義と集団主義という話は行く前から知っていたけれど、教室で教授に向かって手を上げてんのかな?くらいのタイミングで自分の意見を叫んでいる人をみると、「これが "I" ですか!!」って(笑)
自分がクラスルームに座ることで分かることってあると思いますし、これはキャリアというか、生き方として「こんな人いるんや」って思いました。

 

未来の自分が、あの時の自分なりに頑張っていたと思えるように

 

ー留学前に描いてたキャリアプランを教えて下さい。

何も考えてなかったです!(笑)
留学行く前は、何がしたいのか、何が好きなのかとか、自分のことがよく分かってなくて、留学に自分探しを求めていたので。
まじふわふわで行ってしまっていた。。

 

ー他の人だと、ボスキャリ考えてとかあるけれど、たなおさんの場合、本当にノープランで行って、向こうで自分を見つめて考えようって感じだったんですね(笑)

そう!ノープランで自分を見つめながら、ボスキャリも行ったし、なんとなく就活かなと思ってたけれど、2セメスターで満を持して紛争解決学を勉強したんですよね。その時、私の中で、学問とキャリアは別で考えてて、就職は必ずしも勉強していることとつながらないって諦めてました。けれどその紛争解決学の教授は、いかに今勉強してる学問とキャリアをつなげるのかを考えていて、勉強したあとのキャリア含めて、そういう人材を輩出することが私の仕事って考えている人でした。
その教授から授業を受けている中で、「私もこれを仕事にしたいかも」って思えてきて、就職ではなくて、5年生になって国連ボランティアなどのプログラムを受けようかな、院に行こうかな、就職しようかなと3プランくらい、どれでもいけるように同時並行で考えていました。

 

ー全部並行してたんですね。

あの時こうしておけばよかったって後悔は絶対あると思うんですよね。でも、それを少しでも防ぐために、その時の自分ができることは全てやっておきたくて。その時の自分が一生懸命考えて下した決断だって思いたかったので全て取り組んで考えていました。
その時ちゃんと考えた結果だったら、未来の自分も、あのときの自分はあのときの自分なりに一生懸命考えたしって思えるかなって思って。

 

ー悩んでいる状況を含めて、具体的にどのように就活を進めたのか教えて下さい。

スケジュールでいうと、3月から留学先で就活をはじめて、4年になる直前の3月末に帰国、4月からオンライン留学と並行で日本で就活をしていました。

 

ー業界の絞り方とか始め方はどうしていたのですか?

そもそも前提として、その時は、やっぱり5年生になろうかなと思ってたので、ちゃんと就活してなかったです。
就職すると思っていなかったから、インターンも行っていなくて、「私のやりたいことはお金儲けじゃないなぁ」という漠然とした思いから、官公庁と民間の間みたいな組織だけを狙っていました。目の前の人が求めている支援をしたいという気持ちが強くて、そういう組織の方がいいかなと思っていたんです。あとは、準備不足だったから手を広げるのも大変だと思っていたのもあります。
絶対就職しないと!という気持ちがなくて、3つエントリーしたものの中からご縁があればと思っていました。ご縁がなければ院に行こうと。アメリカで、どういう人生もありやなって思えるようになってたから、就活へのストレスはあまりなかったです。

 

留学で育まれたオープンな心

 

ー最終的にどうやって選んだんですか?

私の場合は、コロナウイルスの影響で、海外プログラムは渡航ができなくなったので、最終的に就職か院かの二択で考えました。
最終的に内定を一つもらったから、就職もできるし、院試も時間があったからできるしという状況ですっごく悩みました。

ゼミの先生には院をおすすめされていて、その先生のことを慕っていたし、先生が良いっていうなら院にしようかなって結構傾いていました。
けれど、内定をもらったときに、「なんか働いてみたいかも」って思うようになったんです。というのも、留学を経て、フィールドに出てみないと分からないなと感じることがあって。目の前の人が何を求めているのかって、大学で議論するより、その人に直接聞いたほうが確実って思ったので、社会に出て働きたいと考えるようになりました。
その話を先生にしたら、「働きたいときに働くのが一番ですよ、働きたいと思っているときに勉強しても上手くいかない気がします。」って言われて、働いてみようと思いました。

 

ー人と話す中で、整理していったんですね。

そうですね。
ただ、留学に行く前の私は、先生とか他人に思っていることとか話さないタイプだったんです。けれど、留学中しんどかった思いを留学先の人や日本の友だちに話してみたら、あったかい言葉をかけてくれるって思ったんですよね。
私は、「どうせ私のことは誰も分からない」って思っているタイプで。けれど、意外と言ってみると通じるかもと思うようになって、留学を経て人間愛みたいなのが育まれました(笑)

留学前の自分だったら、ゼミの先生にキャリアを相談するとかはしなかったと思うんですが、話してみると結構ヒントが得られるかもと思うようになって、人に対してオープンになりました。

 

 

ー就活が終わった後の学生生活はどのように過ごしていましたか。

就活後は、勉強したいなって思っていました。留学先でいろいろな分野を勉強してたけれど、これって、阪大でもできるやんってなったんです。私の友だちにシラバスマニアの人がいて、影響をうけてシラバスを読み込んだら阪大でもおもしろい授業あるということに気付いたんです。

例えば、アメリカでジェンダーの授業を受けてたけれど、アメリカベースの話だったので、知識としては面白かったけれど、自分ごととして考えるのは難しかったんです。だから、日本の文脈でジェンダーを勉強したいと思って、人間科学部の、日本の学校のジェンダーの授業を受けたりしていました。本当に自分が勉強したいことを、法学部という枠を超えていろいろな学部の授業を履修しました。

 

ー現在の社会人としての活動も教えて下さい。

組織の目指す方向性に賛同して選んだ、政府系の機関で働いています。

 

ー社会人生活の中で、留学経験が生きてるなと感じることはありますか?

色々な人がいるということを受け入れる耐性です。「何を言ってるの?」って否定的に思ってしまう人がいても、その人の意見を受け入れる。そういう意見があるからといって、その人を否定しないというような、人付き合いの面での学びが、現在の生活につながっているなと思います。
英語っていう面では、部署によるけれど、自分の場合はメールで使ったりです。直接話すとかはまだないですね。

 

ー留学で学んだスペシフィックな知識やスキルより、向こうで得た考え方の土台のようなものが今も生きているんですね。

そうですね。
社会で働く中で、同期や同僚ですごい人多くて、昔の自分だったら、周りををすごいなって思う一方で、どうして自分はこんなにすごくないんだろう、、って、周りの人の凄さを自分のできなさに変えてしまっていたと思います。けれど、留学を経て、他者をすごいなって思う中で、「私は私だし」って、自分を肯定できるようになったのも大きいなと思います。

 

ーありがとうございます。それでは最後に、留学を考えている人にメッセージをお願いします。

私の好きな言葉でも言っておくか(笑)

『あなたはあなたが読んだ本であり、あなたが観た映画であり、聴いた音楽であり、会った人であり、交わした言葉であるっていう言葉があって、経験したことがすべて自分になってるんやって思えるからすごく好きなんです

今まで経験したことで無駄なことなどなくて、留学行かないのも自分になるし、行くのも自分になる。私は、留学行った私の方が好きかなって思ったから留学したけれど、全部全部自分になっていくよって思います。

 

おわりに

 

インタビューを通じて、たなおさんの語る言葉には、すごく芯が通っているように感じていました。その感覚は、留学当時も留学後も、自分は何を考えているのか、どう感じているのかに対して丁寧に向き合い、その都度言語化していくことで、自分の言葉として話しているからなのかもしれないと聞いていて感じました。

「未来の自分も、あのときの自分はあのときの自分なりに一生懸命考えたしって思えるかなって思えるように」というたなおさんの言葉にもあるように、一瞬一瞬に全力で向き合った結果の現れなのだろうと思います。

なんだか取材側まで元気づけられる、素敵なインタビューでした。たなおさんありがとうございました!

 


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